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ブログ

自分勝手なカスタマーサービス

Keiko Tassill

前回、約束してしまった「カスタマーサービス」についていったい何を書こうかといろいろと調査すればするほど、後悔するばかり。検索エンジンに「アメリカのカスタマーサービス」などいろいろキーワードを入れてみるとコンサルタントや専門家の書いたブログや情報、書籍が数えきれないほど出て来る。というわけで今回はその分野に専門知識があるわけでもないので消費者としてまた通訳の経験談として読んでいただきたい。


十数年前はよく日本からの視察団が優れたカスタマーサービスで有名なデパートのノードストロームや高級ホテルのリッツカールトンを訪問したものだ。ノードストロームでは理由も聞かずに返品ができ、全額払い戻してくれるというもの。販売もしていない車のタイヤをお客が返品したいと持ってきてそれに店員は何も聞かずにお金を返したという逸話があるくらいだ。この習慣が身についている私も気に入らなければ後で返しにくればいいと思い気軽に買ってしまう。しかし、なかには洋服を何回か着てからご丁寧に洗濯までして洗って持ってきて、お金を返せと言う客もいる。また、食べ物などは半分以上食べてから、やっぱりまずいからお金を返してくれと主張する客も珍しくないそうである。最近、アメリカでも低脂肪、低カロリーと言うことではやっているフローズンヨーグルトのお店に入ると”Welcome to(お店の名前)”すなわち「いらっしゃいませ」というわけで、久々にアメリカでこの言葉を店で耳にし、その一言が新鮮に感じた。普通は”May I help you?”これも「いらっしゃいませ。」と一般的に訳されているが、正確にいうと「(私が)お手伝いしましょうか?」となぜか機嫌の悪い時には頼んでもいないのに手伝いはいらいないと言いたい気分になることもある。いずれにせよ、最近多くの店で店員がイヤフォンをつけていて、無線機器で従業員間のコミュニケーションを飛ばし、お客様に迅速で効率的なサービスを提供しようと頑張っている。それを見る度に私はどうしても同時通訳の機器を思い出してしまい、せっかくショッピングしているのに、突然こちらまで仕事モードになってしまいそうだ。
確かにリッツカールトンのサービスや施設はすばらしい!しかしチョコレート好きなアメリカ人はいつでもどこでもチョコレート!夜、ちょっと高級なホテルの部屋に帰るとベッドのカバーがおろされていて、よくチョコレートがおいてある。私としては、夕食、そしてデザートまで食べてきたばかりなのにまたチョコレートを食べるのはかなり罪悪感がある。昨年、東京でたまたまコンラッドに泊まった。仕事で疲れきってちょっとイライラして帰ってきながら、米系のホテルだからチョコレートくらい置いてあるだろうと部屋に戻るとチョコレートはない。その代わりベッドの上にかわいらしい小さな熊のぬいぐるみが首を傾げながらちょこんと座っていた。思わず熊に向かってにっこり微笑みかけ、熊も私にスマイルを返してくれた気分になりその日の疲れもイライラも消えてしまった。押しつけがましくない、ちょっとした気配りがこんなに私の気持ちをなごませ、喜ばせ、そして感動を与えてくれたのだ。ただ、男性のお客さんだったらどう感じるかはわからないが。


とにかく日本から帰って来るとアメリカの粗悪なカスタマーサービスがいやに気にさわる。アメリカの電話でのカスタマーサービスは、自動音声システムでこちらは聞き逃すまいと一生懸命聞きながら、何度もキーを押して長々とBGMの音楽やメッセージを聞かせられて10分、20分待たされたあげく、突然ぷつりと電話が切れてしまうこともある。こちらも完全に切れてしまう。銀行の窓口に行って質問をしても店内の電話でカスタマーサービスの番号に電話をして質問してくれと言われる。書きながらいろいろなことを思い出すだけでも気分が悪い。これが日常茶飯事なわけだから、日本でカスタマーサービスに電話をした時、丁寧にいろいろとやってくれるものだから感激してしまう。ただ、自分が出かけなければならない時にはもういいと言ってもあれこれ丁寧に話されるとイライラしてしまいこれまた自分勝手なものである。


こういう経験談は数えきれないくらいあるのでそれでは、最後にもうひとつだけ。 なぜか東京でも安心感からか何度もスタバに通い続け、パートナー(スタバで働く人たちをそう呼ぶらしい)の接客スキルには感激していた。 東京に行って1週間目は都会の刺激、規則・礼儀正しい日本のシステムやカスタマーサービス、そして人ごみですら心地よく感じるのだが、だんだん滞在期間が長くなると、青空で広々としたリラックスした、イージーゴーイングな態度のアメリカが恋しくなって来る。カリフォルニアに戻り、日本からのクライアントと一緒になぜかまた毎朝スタバに通う。2日目に若いはたち前後のさわやかタイプの青年パートナーに注文をすると、どうもスコーンを渡すのを忘れているらしい。そこで私はやさしくまずは’Did I forget to order my scone?’(あら、私スコーンを注文するのを忘れたかしら?)と自分のせいにしてみる。すると’Oh,Yeah,I forgot.’(あれ、僕忘れてたよ。)とにっこり笑いながら、しかし言葉使いはまるで同年代の友達にでも話すように、お詫びの気持ちのかけらさえ感じられない。そして’I always do this.’(いつもこれやる(忘れちゃう)んだよねぇ〜。)ともう一言付け加える。私もただにこりとスマイルを返した。いつもの私だったら日本から来たクライアントに「だからアメリカのカスタマーサービスは!!!こんなレベルなんですよ。謝りもしない。」と怒り狂ったように言うのに、日本で息苦しくなってきた私はなんと「やっぱり素直に自分の間違いを認めて、リラックスした態度で対応できるくらい余裕がなくっちゃね。この寛容さが個性を生むのよ。」とその青年パートナーを褒めていた。まったくカスタマーサービスへの期待も自分勝手なものだ。


いずれにせよ、お客側はある程度の期待をもって、それ以上の対応・サービスを受けた時に「よかった」と判断し、期待通りであれば「当たり前」、そして期待以下の時には「よくなかった、ひどかった」と判断するものである。私たち通訳は常に高い品質を要求されているので、「できて当たり前」であるが、クオリティーはもちろんのこと、カスタマーサービス=ピープルスキルをも備えた安心と信頼をもって使っていただける「よかった」という通訳者を常に目指しています。(写真:コーヒーショップ)