マスクの文化
Keiko Tassill
何年か前に日本の医療品メーカーの方がインフルエンザの時期なのにアメリカのドラッグストアでマスクが見当たらないしマスクをしている人を一人も見かけないのはどうしてかと聞かれたことがありました。インフルエンザは冬場になるとアメリカでももちろん大流行するわけですから大きな市場があるわけで、このクライアントは市場参入のチャンスを考えていたわけです。私はただ「マスクをする習慣がないからです。」と答えるとクライアントはガッカリ。習慣や文化、人の行動態を変えるのは並大抵のことではないようです。
確かに日本では小学校の給食当番の子供たちも、風邪をひいている人が他の人たちにうつさないための、また花粉症対策のマスクも一般的です。日本を訪れる外国人の目にはマスクを着用している姿は非常に異様で恐い厳格な光景のようです。アメリカでは厳格どころか写真のようにどうせマスクをはめるんだったら楽しく個性的にというのでしょうか、皆、色々と工夫してエンジョイしているようにも見えます。今回の新型インフルエンザで外国人がマスクを着用している光景も多く報道されていますが、発症数の一番多いアメリカ国内でも空港以外の街中では私個人としては1人も見かけていません。仕事柄、空港を利用する機会も多く、またグローバルミーティングで世界中の人たちが大勢集まる中で仕事をする私はバッグの中にマスクを携帯していましたが、一人だけ目立ってマスクを着用する勇気がなく使わずじまいでした。
アメリカ国内でマスクをしている姿を一般的に見かけるのは手術医がいわゆる医療プロ用のサージカルマスクと言うのを着用していたり、また特にカリフォルニアで多い山火事で燃えてしまった家屋の後片付け時などに煙や風塵などから保護する為にマスクを着用しているのは一般的です。というわけで、カリフォルニアに住んでいる私にとってはマスク=山火事なのです。
給食当番のマスクは衛生面でのマスクですが、アメリカの外食産業の調理に携わる人たちは必ずヘアネット/キャップとプラスチック手袋をはめています。ところが陽気でおしゃべりな従業員たちはべチャべチャおしゃべりをしながら作業をしているのでどうかと思います。これも、アメリカではマスク着用の効果よりも手洗いの徹底を奨励していることを反映しているのではないかと思います。
口からの飛沫感染/衛生よりも手の衛生に重点を置いているアメリカでは、寿司バーカウンターの板前さんがこのプラスチック手袋をはめて握った寿司を出された時はさすがに食欲を失ってしまいました。